シアターキノで上映された「マイヤ・イソラ 旅から生まれるデザイン」でデザインの秘密が明かされています。
映画はデザインの誕生過程だけでなく、根底に何があるのか、文化的な背景や彼女の内面にまで迫る内容になっています。
以下、映画のポイントを私なりにピックアップしたいと思います。
・マイヤ・イソラは小さい頃、馬が大好きで、大きくなったら馬になるんだと考えていた、というエピソードを紹介。馬をモチーフにしたデザインもある。私の印象では、カレワラ・コルにあるような古い時代(ヴァイキングの頃)のフィンランドの馬のデザインと似ているように思われる。彼女のデザインの根底にはやはり古代から受け継いだフィンランド人独自の感性があるように感じる。
・ロシアのサーカスをよく見に行ったというエピソード、また、ロシアの民族模様の影響が語られている。かつてスウェーデン王国の支配から帝政ロシアの支配に変わった時、アレクサンドル一世が自治を認めたことから、当時はロシアとの良好な関係が進み、フィンランドの民族意識が高まった(民族叙情詩カレワラもこの時期に編纂されている)と同時にロシア文化との関係も深まった経緯がある。そのことを思い起こさせる。
・マイヤ・イソラのデザインは絵画の感覚で生み出されていることが語られる。そして、輪郭線を意識するのではなく、色彩なのだという説明は、作品を見た印象とよく一致するように思われる。
・映画の日本語の副題の「旅から生まれるデザイン」(英語の副題は Master of Colour and Form)の通り、フランス、イタリア、アメリカなど旅先や住んだ場所で触れた自然をデザインに反映させていく様子を紹介している。マイヤ・イソラのデザインに「北欧」の枠に収まらない雰囲気がある理由として納得する。
・マリメッコの創業者アルミ・ラティアがなくなった後の心境について触れた際に、タルコフスキーの映画「惑星ソラリス」(ソ連時代のSF映画、人間の想いを具現化してしまうという海を持つ惑星が舞台)の一場面が引用された。(ソラリスに出発する前のひと時、ダーチャらしき建物の前に主人公がいて、テーブルにグジェリ陶器の茶器があり、そこに雨が降る場面)タルコフスキーの映画は人間の内面を重視し極めて哲学的であるが、自然をデザイン化していくマイヤ・イソラも心で感じたものを重視していて、哲学的な面も持っているのかもしれない。
以上が私がピックアップしたこの映画のポイントです。
当店のカフェコーナーにはカレワラに関する本などフィンランド関係の書籍、タルコフスキーに関する書籍があります。
また、雑貨販売コーナーでは、カレワラ・コルやグジェリ陶器なども展示・販売しています。
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